こんにちは、ノアヲです。
唐突ですが、「色の役割ってなんだろう?」と考えたことはありますか?
色に興味を持ち、これから勉強しようと考えている人にとって、この疑問は学習の大きな手助けになるような気がします。
自然界、人間社会における色の使われ方の雑学的なトピックとともに、色の役割について考察していきましょう。
3つの色の用法
このページでは、3つの視点から「色の用法」をご紹介し、最後に色の役割について考えます。
3つの色の用法
- 色は何かを目立たせる・隠す
- 色は意味を伝える
- 色はイメージを作る
それでは、順番にご覧ください。
1.色は何かを目立たせる/隠す
1つ目。
色は「目立つため/なにかを目立たせるため」に用いられています。同時に、真反対の「隠れるため/なにか隠すため」にも使われます。
そこから転じて「なにかを区別する」という効果も得られます。
色で目立つ/隠れるの身近な例
派手なドレスと、地味な制服。
目を引くインパクトあるカラフルなCMと、周囲に溶け込んで記憶に残らない白黒のチラシ。
色は印象を大きく左右します。
たとえば学生時代、教科書に蛍光マーカーで線を引いた経験はありませんか?
これはまさに、色で強調して目立たせています。覚えやすくする工夫ですね。
オッサンがぶらりと集まる飲み屋のちょうちんには、赤や黄など暖色系の色が一般的。視界で目を引きやすいためです。
ミリタリーウェアの迷彩柄は、周囲の環境に溶け込んで隠れるために考案されました。
電車の路線図は、色を使って各路線を区別し、わかりやすく示します。
サッカーや野球などのチームスポーツのユニフォームも、色で両者を区別していますね。
自然界は、色で「目立つ・隠れる」のオンパレード
自然界では「目立つ・隠れる」が生死にかかわります。
生存と繁栄に色を活用しているのではないか?と考えられる事例は数多くあります。
想像しやすいところだと、果実が色の変化で成熟を示すのも、その一つです。
葉の緑の生い茂るなかで、赤や黄色に染まった実は目立ちます。動物や鳥が見つけ、食べたり巣へ運ぶことで種子が移動し、生存圏を広げていきます。
クジャクのオスは鮮やかな色の羽を持ちます。その美しさでメスへのアピールしていると言われています。
このように、色で目立ってアピールに使う動植物がいる一方で、周囲との同化を図り、うまく隠れて目をあざむく種もいます。
たとえば昆虫のハナカマキリは、花そっくりの見た目で花弁に待機し、蜜を吸いにきた昆虫を捕食します。
同じくカマキリのカレエダカマキリは、枯れ葉や枯れ木そっくりの姿で身を隠します。
魚の身体も実は、賢い色使いなのだそうです。(もしも、冷蔵庫に一匹まるまる入っていたらご覧になってください)
多くの魚は、腹の部分が白っぽく、背中のほうが暗い色です。
この理由だと考えられている説がおもしろい。
水中は、浅いほど光が届くため明るく輝きます。反対に、深いほど光が届かず暗い世界です。
つまり、浅瀬を泳ぐ魚の姿は、より深いところを泳ぐ魚の位置から見上げたときに腹の白色が太陽の光と同化して目立ちにくくなります。一方、深層を泳ぐ魚の姿は、それよりも上層を泳ぐ魚の視点からだと、背中の暗い色が周囲に溶け込みます。
これはカウンターシェーディングという擬態法です。上下左右を移動できる水の中で、魚たちが生き残るために獲得した色彩戦略と考えられています。
ちなみに、深海魚に透明や真っ黒など独特の色をした種が多いのは、生息域がほぼ光が届かない暗黒世界だから。きっと、色でカムフラージュする必要がないからなのでしょう。
「目立つ」から「隠れる」に変わった戦地の色
人間の色の利用のなかで、一つおもしろいトピックをご紹介します。
すでに触れたように、迷彩服は環境に溶け込む擬態・隠蔽が目的です。森のなかでは緑の迷彩、雪のなかでは白い迷彩柄を用いて、周囲との同化を図ります。
しかし、ヨーロッパにおいて剣による白兵戦がメインだったころの軍服には、赤や白など派手な色が使われていました。
この色づかいは、相手を威圧するため、敵味方の識別、そして士気を高めるためなどの目的があったそうです。
その後、戦い方が変わって銃火器や戦闘機などによる遠距離戦が中心になってくると、派手な色を着ていると格好の的となります。
そこで、イギリス軍が1800年代にインド派兵の軍服にカーキ色(土ぼこり色)を採用し、アメリカが追随。それから迷彩服が誕生したそうです。いまでは透明になる(光の反射を利用して周囲と同化する)ための服も研究されています。
戦いの目的が勝つことなのは同じでも、色の使い方が「目立つ」から「隠れる」に反転した事例です。
2.色は意味を伝える
色の用法の2つ目。
色は「なんらかの意味や意図を伝える手段・記号」として用いられています。
交通信号や標識
たとえば信号の3色。
文字で「とまれ」や「すすめ」と書いていなくても、私たちは色でその意味を理解していますよね。
道路を横切る白い縞模様が描かれていると、そこが横断歩道であると思い、黄と黒のラインが張ってあると、立ち入り禁止や「危ないのかな?」とイメージします。
これらに関しては、CIE(国際照明委員会)が、信号の色を赤・緑・黄・白・青の5色と定めています。このルールは世界共通です。そのうち、交通信号機には赤・黄・緑の3色を用います。
日本は、日本産業規格(JIS)で「安全色」を規定しています。この規定により、赤、黄赤、黄、緑、青、赤紫の6色と補助色の白と黒を加えた合計8色は、標識でそれぞれ意味を持って使われます。
赤 | 防火、禁止、停止、高度の危険 |
黄赤 | 危険、航海・航空の保安施設 |
黄 | 注意 |
緑 | 安全、避難、衛生、救護、進行 |
青 | 指示、用心 |
赤紫 | 放射能 |
白 | 通路、整頓 |
黒 | 文字、記号、矢印などに使用、また黄や白の補助色として使用 |
ちなみに、日本で道路交通信号の緑色を"青"と呼ぶのは、日本語は古くから緑と青の境界が曖昧だったため。(たとえば、緑の野菜を青野菜と呼ぶように)
日本で交通信号が初めて導入された1930年の規定は「緑信号」と表記していましたが、呼称の変化にともなって1947年制定の道路交通取締法から「青信号」という記述に変わりました。
それでもJIS安全色では、緑が進行の意味であり、信号の色も緑のままです。
国旗
国旗の色も、それぞれの色が何かを象徴しています。
フランスの青・白・赤の3色は自由・平等・博愛。イタリア国旗の3色だと、緑は国土と自由、白は雪と平等、赤は情熱と博愛を意味します。
日本の日の丸は、文字どおり赤い太陽を象徴するといわれています。日の丸を国旗にしたのは1870年(明治3年)からで、まだ最近のこと。ですが、赤と白の組み合わせは平安時代、源平合戦でも使われていたようです。
余談をひとつ。紅白歌合戦や運動会の紅組・白組のように赤と白を対立させて競いあう構図は、平家が赤い旗、源氏が白い旗を使っていたことに由来する、とも言われています。
1000年前から"紅白"の対立なのですね。
企業ロゴ
企業のロゴマークの色にも、意味が隠れています。
たとえば、Googleのロゴの色は、青、赤、黄、緑の4色です。
このうち青・赤・黄は信頼、情熱、陽気の意味を含んでいて、さらにこの3色は色材の三原色でもあります。そこに二次色の緑(青と黄を混ぜてできる色)を加えることで、「常識にとらわれない」という指針が込められているそう。
おもしろいですよね。
自然界
既述のとおり、果実が熟したことは色の変化でわかります。
一部のサルのオスは、繁殖の適齢期になるとお尻や顔の赤味が増し、メスにアピールします。
この画像のタテジマキンチャクダイという熱帯魚は、カラダの色味とデザインが幼魚と成魚でまったく違います。もはや同じ種類の魚とは思えないほど。この変化で同種に成魚かどうかを伝えます。
動物の色覚のコラムでご紹介したアオアシカツオドリは、脚がキレイな水色です。
この鳥は一夫一婦制であり、足のブルーで相手を誘います。この色は、若いほど(よく食べて栄養が豊富なほど)青味が強く、生殖力が高いとみなされて異性にモテます。そして、この青は加齢と共にくすんでいきます。
ド派手な色をしたヤドクガエルは、その色で自身の毒性を示して威嚇し、外敵から身を守っています。(カエルがお苦手な方は、サッと次へ進んでください)
3.色はイメージを作る
色の用法の3つ目。
色は、インテリア・ファッション・製品パッケージ・広告・そのほか対象物の「イメージや雰囲気づくり」に用いられています。
イメージ作りの肝は「似せて、印象を転写」
色を使ったイメージ作りの根底にある考えは、何か他のモノの色味に似せることによる「印象の転写」です。
世の中にすでに存在しているもの、文化に根づいた伝統的なもの、暮らしのなかで慣れ親しんできたもの、これらのカラーコーディネートを参考にすることで、その色の持つ印象、イメージ、雰囲気、テイストを借りてくることができます。
存在しない新しい色の組み合わせから「型破りなイメージ」を作りだすこともありますが、その発想もまた既知の存在と色合いありきのこと。
似せる。つまり、擬態する。本質的には自然界の色の活用法と同じです。
たとえば、"自然派"をアピールしたいお店なら、木目調のブラウンのテーブルや観葉植物のグリーンなどを用いることで自然界の空気感を再現し、ナチュラルで癒しの雰囲気をお客様にアピールできます。
実際、そういったお店もよく見かけますよね。
日本では、寺社仏閣や伝統文化にみられる色の組み合わせを使って、伝統と格式のイメージを再現している空間・モノ・メディアもよくあります。ジャンルを問わず。
畳や障子の風合いや色から"わびさび"を表現したり、神社の鳥居の朱色や、金・緑・黒・白などの配色から"みやび"な空気を作ったり。
藍染の紺色を使って、"職人の手仕事感"や"高い技術"の印象を示したり、渋めな茶色、ねずみ色、紫などの組み合わせから"粋な落ち着き"をかもし出したり。
ファッションだと、たとえば警備会社の警備員の服装の多くは、濃いネイビーやブルーと白を使っています。この色味と堅い印象のデザインは、警察の制服をイメージさせます。そうすることで、「ルールを示す公的権威」のような印象を人に与えます。
まさに擬態。
カレールゥやレトルトカレーのパッケージは、黄色や深いオレンジなどの暖色系を基調としたものが多いよね。これはカレーの色味や雰囲気に似せて「実物らしさ」をアピールするため。
トーンからイメージを作る
イメージ作りの際は、トーンからも検討します。
トーンは色彩学の言葉で、明るさ(明度)、あざやかさ(彩度)の両方をまとめて色をグループ分けした概念。画像は、一般財団法人日本色彩研究所が開発したPCCSのトーン一覧表です。
各トーンの色のグループは、それぞれ特徴的なイメージを持っています。
たとえば、明るい色のトーンは「元気」や「快活」、暗い色のトーンは「落ち着いた」「シックな」など。
連想する言葉は個人差と文化差があるため、完全に決まっているわけではありません(ただし、PCCSの各トーンには対応する言葉があるので、色彩検定の勉強時にはそれを覚えてくださいね)
同じトーンや近いトーンの色でカラーコーディネートすると、まとまった印象を作ることができ、そのトーンの持つイメージを対象に転写できます。
たとえば、水やスポーツドリンクなどの飲料は、ほとんどが高彩度・高明度領域のトーンの鮮やかな青、やさしい水色などを使ったパッケージです。その色から、涼しげ・清涼感・クリアな雰囲気を出しています。(画像はシンガポールのスーパーにて撮影)
もしもこの色が重たい茶色や紫であれば、誰も手にはしないでしょう。
色を変えるだけで顧客満足度とリピート率が伸びたり、その逆もしかり。イメージ作りは重要です。
色の本質的役割はなんだろう?
3つの色の用法
- 色は何かを目立たせる・隠す
- 色は意味を伝える
- 色はイメージを作る
さて、ここまでこの3つの視点からご紹介してきた色の活用事例をもとに、最後に「色の役割」について深掘りしましょう。
色の役割は"生きるため"?
色の役割は、突き詰めると"生きるため"、"生き残るため"だと考えられてます。
色の本質的役割を、そうとらえて自然界と人間界をながめると、色を扱う際のヒントが色々とみえてきます。
まず、自然界の動植物たちの色の利用。
色で目立ち、異性にアピールし、種を広げる。また、威嚇したり優位性を示して敵を退ける。
反対に、色で隠れることで争いを回避したり、騙して食べる。
これらはまさに生存のためと言えます。
(注)ただし、人間と他の生き物は色覚(色の見え方)が異なるため、私たちと同じ色を見ているとは限りません。「この生物は、この色を、こういう目的で使っているのではないか?」とする解釈はあくまで私たち人間の感覚に基づくもので、本当は見当違いかもしれない。
でも、色に反応していることは明らかです。
自然界における色の活用法をヒントに、あるいは結果的に、私たち人間も同じように色を暮らしに役立てています。
あざやかなドレス・メイク・アクセサリーで飾り、目立つ。
服の色で威嚇する。または周囲と同化し、相手の目を欺く。
色の組み合わせで空間や製品を演出し、お客様にアピールする。
標識・案内・路線を色で区別し、理解しやすくする。安全・危険を示す。などなど…
視認性・誘目性は生きるための特徴?
色の役割は"生きるため"という考えの補足となるのが、そもそも生き物が色覚(色をとらえる感覚)を持っている理由です。
人間を含む動物全般の色覚は、それぞれが進化のなかで獲得してきたという説があります。
進化とは、環境への適応と最適化。
おもしろいことに、色は組み合わせによって目立ちやすさが変化します。
たとえば、青い背景に白と同系の青色で文字を書くと、あきらかに白の方が見やすい。
ボーッと目の前を見ているとき、緑のモノよりは赤いモノの方がパッと目にとまりやすいと思います。
これらは専門用語で視認性(しにんせい:見やすさ)と誘目性(ゆうもくせい:注目しやすさ)といいます。(類似のものに、可読性、明視性、識別性、といった用語もあります)
こうした色による反応の差が生じるのは、色そのものが持つ力というより、私たち人間の色覚にそなわった特徴です。
つまり、人間にとって目立つ色・目立ちにくい色のパターンがあるということ。
目立ちやすい色の代表は赤。
赤に反応しやすい理由として挙げられるのは、私たちの血が赤く見えるから、という説。
出血や流血が命に関わるため、過敏になるよう進化したのだそう。
もしもこの説のとおりなら、視認性と誘目性は、まさに"生きるため"に獲得した色への反応です。
補足として、一般的に赤い色や暖色系は進出色(実際より手前に見える)、青い色や寒色系は後退色(奥に見える)といいます。
この違いも色の特徴ではなく、目のなかの視細胞が赤系に反応しやすいから。生きるうえで重要な赤のほうが大きく見えるのは、なるほど!と納得してしまいますね。
そもそも、もし色がわからなければ今のような世界にはなっていないでしょう。
明暗のみの白黒世界では、モノが食べられるかどうかの判別も、危険の察知も難しくなります。
私たちはとっくに滅んでいたかもしれません。
"生きるため"に「色を扱う」技術を得た?
人間と他の動物の違いを挙げるなら、「色を扱う」という発想、そして色(感覚)と意味(言葉や思考)を結びつけているところでしょう。
人類は、色を単なる個人の感覚に留めず、顔料・染料などの色材を作り、ほかのモノに塗る・プリントするといった技術を培ってきました。
今では、ほとんどの色を自由に、目的に応じて使用できています。
あたり前に使っている蛍光ペン、色鉛筆、絵の具、PCのディスプレイにも出来上がるまでの物語がありますよ。(違うページでご紹介しますね)
色に名前をつけて呼ぶ、色材を作って再現する。塗る。整理する、組み合わせる。
これらは、人間ならではの高度な作業です。
動物も色で意味を伝えます。しかし、頭で考えて、意図して色を扱うのは私たちだけ。
たとえば、信号の緑(青)も黄も赤も、それ自体はただの色。意味を決めて、共有しているから機能します。
国旗や企業のロゴは、象徴を込めて色を選んで作られています。
製品パッケージや商業施設のカラーリングは、検討されたコンセプトに基づいた色彩です。
これらすべての「色を扱う」行為を、私たち人間はただの気まぐれ、遊びで発展させてきたのか?
そうではなく、やなり自然界の延長です。"生きるため"を意図してのこと。
信号は、交通トラブルを減らして集団生活を円滑するため。
旗の色に象徴を込めるのは、国のアイデンティティ確立や所属意識の向上など、集団維持という目的を含んでいます。
企業が特別なブランドカラーを守るのもまた、顧客に訴え、認知させ、ファンを固定させるため。市場競争を勝ち抜くための戦略です。
パッケージカラーの工夫は、お客様に手に取ってもらうため、もっと売れるため。
商業施設の空間演出は、体験価値や顧客満足度のアップ、滞在時間を伸ばして売り上げを増やす、などの意図から。
集団・社会が存続するため。
魅力をアピールし、集団・社会・マーケットのなかで繁栄する、生き残るため。
こじつけのようですが、国・社会・企業・製品・サービスをひとつの生き物のように捉えると、やはり共通の目的が透けてきませんか?
誰かに見せるためではなくても、自分の部屋や服装などパーソナルな色の工夫は「良い気分で毎日を過ごしたい」「気持ちをアゲて生きたい」といった狙いが少なからずあらわれています。
要は、生きることに前向きだからこその行動です。
私たちは、そのように自己満足にも色を活用します。他の生物と違って直接的な生存本能がモチベーションではない部分もあるでしょう。
たとえば、エンタメのカラフルで楽しい演出。アートの美しい色彩表現。
これらエンタメやアートは、直接は生死に関係しません。ただ、日々に潤いを与える娯楽、または崇高な意識の具現化、言わば生きる喜びです。
やはり根底は同じものが流れているように思います。
「伝わる」と「伝える」のギャップに注意
"まとめ"の前に、ひとつ付け加えます。
「色を扱う」ならば、「伝える」と「伝わる」の違いに配慮しなければなりません。
私たちは、育った環境、国、言語、社会システム、そして文化など、それぞれ異なった背景をもっています。
発信側が色に意味を込めたり、意図してカラーコーディネートしたとしても、受け手はいくつもの自分のフィルターを通して解釈を加えます。
そのため、狙いを100%伝えられるとは限らない。
赤い色は筋肉の反応を高め、血圧を上昇させる。青い色は沈静作用がある、といった実験結果があります。このような生理的な反応は、人類共通かもしれないです(個人差はありますが)
一方、たとえば「この黄色は"愛"を表現しています」と言っても、興味がない人にはさっぱり。
ヨーロッパで開催される何かのパーティに出席するにあたって珍しい「緑のドレス」を着てオシャレにキメたつもりでも、ぜんぜん反応がイマイチだったり(欧州圏では緑のドレスは"不吉"を象徴するといった迷信が少なからずあるため)
国際的なマーケティングでは、受け手の色の好みを無視した配色パッケージで製品を売り出して大失敗した、といった話もよくあります。
その逆の大成功もしかり。
他者へのアピール(満足度アップや売上向上なども含む)が狙いで色を考える場合、「それを見る人・体験する人は、どんな文化背景をもっていて、どう感じる?」を十分に検討してください。
まとめ
以上、暮らしのなかでみられる色の用法を3つの視点からご紹介し、「色の役割」について考えてみました。
3つの色の用法
- 色は何かを目立たせる・隠す
- 色は意味を伝える
- 色はイメージを作る
このうち、1番目の「色で目立つ・隠れる」用法は自然界・人間界に広く見られます。
2番目の「色で意味を伝える」行為は、自然界にもみられますが、ロゴや旗のように思考的な意味を決めて上乗せするのは人間特有。
3番目の「色を組み合わせてイメージを別のものに転写する」のは、色を再現する技術が必要な、人間ならではの用法です。
しかし、2番と3番も結局は1番と同じ。
色(色覚)は生きるためにある。
生きるために色を使っている。
本質的役割はここに集約されるのではないでしょうか。
動植物は、基本的に自分たちが生きるために色を用います。
人間も本質は同様です。生き物ですから。
ただ私たちは、積み上げた技術によって、他者を"生かすため"に色を使うこともできます。
たとえば、街の案内板に、色を認知しにくい人でも分かるような色彩を用いたり、心を安らげるように空間の配色を工夫したり。
色は、感覚に訴える非言語のコミュニケーションツール。
競争に勝つため、利益追求のためにも使えますが、一方で、言葉では伝えられない優しさを、色に込めることもできます。
「伝える」と「伝わる」のギャップは、相手の目線でとらえるほど埋まります。
人間、一人では生きていけません。
カラーコーディネートは、みんなで生きるための気配りの技術。
個人的には、この考えを大事にしています。
色の学びは日々のなかで
書店やネットには、カラーコーディネート術、色彩心理効果、色彩調和論、色の象徴性など、色にまつわる情報が溢れています。
真偽は不明ながら、色と性格を結びつけたものまでありますね。
これらの知識を片っ端から詰め込んでも、頭のなかでバラバラのままではもったいない。
そこで、「色の役割」を考えながら、身近な「色の用法」を調べてみてください。
色は、私たちの暮らしのすべてに関わっています。
だから、色について学ぶための材料も、そこらじゅうに転がっています。
自分で得た「そうか、なるほど!」という発見は、生きた学びです。
冒頭で書いたように、このページは色に興味を持ち、これから勉強しようと考えている人に役立つように情報を盛り込みました。
長かったので、ここまで読むのが大変だったと思います(反省)
ありがとうございました。
最後に、個人的に好きなアーサー・キットの残した言葉で締めます。
私は常に学んでいる。墓石が私の卒業証書だ。
"I am learning all the time. The tombstone will be my diploma."
Eartha Kitt, 1927-2008、アメリカ人歌手
これから色の勉強をされる方は、日々を生きるなかで、めいっぱい色の探求をお楽しみください!!