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色って何?

犬や猫は色がわかるの?動物・鳥・魚・昆虫と人間の色の見え方の違いや色覚の話

犬や猫の色の見え方は?

「うちのワンちゃん、色がわかるのかしら?」

「ネコって色が見えてるの?」

いま犬や猫と暮らしている方、過去に暮らしていたご経験がある人は、そんな疑問を持ったことはないでしょうか?

また、なんとなく「ほかの生き物は人と同じように色がわかるの?」と気になったこと、ありませんか?

今回はそんなテーマから色について掘り下げます。

犬・猫は色がわかるのか?

人、動物、鳥、昆虫、そのほかの生き物の色覚の世界について書いているので、雑学・豆知識としてお楽しみください!

色がみえる理由は?

「動物が色をどう見ているのか」の話を進めるにあたり、まず「私たち人間がどのように色を見ているのか」をおさらいしましょう。

色は光・目・対象の三角関係よる産物

私たちが色と呼んでいるものは、

光、目、見ている対象

の関係のなかで生じる感覚です。

見ている対象物そのものにペタッと色がついているのではありません。(色とは何か?の記事でも詳しく触れています)

たとえば、晴天のなかで目のまえに赤いりんごがあるとしましょう。

りんごはなぜ赤いのか?

このりんごが「赤く見える」のは、りんごが太陽の光の一部を吸収して残りを反射し、その反射光が目に届いているからです。

色の知覚

私たちの目の細胞が、受け取った光に応じて信号を脳に伝え、情報を整理して、ようやく「あ、これ赤だな」と認識します。

りんごに赤い色がついているのではないし、太陽光が赤いのでもなく、目はもちろん赤くない。

光に含まれるエネルギーの一部がりんごで跳ね返り、目がキャッチし、脳内で赤が生じるわけです。

光は電磁波の一部

私たちが「光」と呼んでいるものは、電磁波です。

厳密には、電磁波のとてもせまい領域を指します。

可視光線とは?目に見える電磁波って?

私たちは、およそ380ナノメートル(nm)から780ナノメートルの波長を持つ電磁波だけを、目で「視る」ことができます。(幅は多少の個人差あり。nmはナノメートル、十億分の1メートル)

この、ざっくり400ナノメートルの範囲の電磁波のことを、目に見える光という意味で「可視光線(かしこうせん)」と言います。

それ以外の電磁波は、目でみることができません。

たとえば、可視範囲の短波長側(すみれ色や青に感じる領域)を出ると、そこには紫外線があります。紫外線(紫の外の光線)は、私たちは目で知覚できない。

「うわ、今日は紫外線多いな。日焼けしそう」

と、肉眼でその日の紫外線量を把握できたら役立ちそうですが、今のところ不可能です。

反対に、可視範囲の長波長側(赤に感じる領域)の外には赤外線があり、電子レンジのマイクロ波や、スマホの電波などもあります。

「お、ここwifi飛んでるぞ」

と目でわかったら、どうでしょうね。きっと現代社会はそこらじゅう電波だらけで、逆に生活できないでしょうか(笑)

私たちは、電磁波の飛び交う空間のなかに存在し、とてもせまーい領域だけを目でとらえて暮らしている、とも言えます。

そして、目には見えないけれど各種の波長もあたりまえのように活用している。

"見える"と"見えない"の違いは波長・周波数・エネルギーの差です。

私たちが感じるあらゆる色の差も同じく、可視光線ごとの波の振幅(周波数)とエネルギーの違い。

波長が短くなるほど青や紫に見え、波長が長くなるほどオレンジや赤として知覚します。中央付近は緑です。

どの波長がどのように目に入るかで、感じる色が決まるわけです。

目のなかの細胞が光をとらえる

目に入ってきた光を色の感覚に変換する作業は、目のなかの各種の細胞や、脳の情報処理が担います。

私たち人間の目の網膜には、

・明暗を感じる細胞
・色を感じる細胞

がびっしり並んでいます。

目のなかの杆体細胞や錐体細胞の説明

明暗を感じる細胞は「杆体(かんたい)」、色を感じる細胞を「錐体(すいたい)」と言います。

明るさ・暗さを判断する「杆体」は1種類。

一方、色を感じる「錐体」は

・S錐体(青錐体)
・M錐体(緑錐体)
・L錐体(赤錐体)

の3種類を持っています。

S、M、Lの三種類は、感度の違いです。

Sはショートの略。つまり、S錐体は短い波長域の光への感度が高い細胞です。Mはミディアムの意味で、M錐体は中波長域に反応します。Lはロング、文字どおり長い波長域の光に反応します。

これらの視細胞が、目に飛び込んだ光をキャッチして電気信号に変換します。

さらに網膜の奥にある細胞に伝え、そこから脳の視覚野に情報が届き、あらゆる色が生じるわけです。

人によって色の見え方が違う?理由は?

色の知覚についてざっくり理解できましたか?

ご興味があれば、詳しくは専門書をご覧ください。このページではむずかしい専門用語を省いて説明しているため、やや冗長的かもしれません。

専門書では、分光分布(ぶんこうぶんぷ)や錐体・杆体以外の視細胞のはたらき、脳内での色知覚の仕組みなど、用語とともに端的にまとめられています。

きっと、知れば知るほど「宇宙や人間の身体ってよくできているんだな」と感じますよ(笑)

人によって色の見え方が違う理由① 色覚特性(色弱・色盲)

色覚特性(色盲・色弱)とは何か?

さて、話を進めましょう。人間が感じる色の世界は、身体(目)にある各種の視細胞が、電磁波の380nm~780nmあたりをキャッチできる"仕様"だから生じています。

もし200nmとか1000nmの波長までとらえることができるなら、全然違う景色になっているでしょうね。その人は、紫外線や赤外線まで見えますから。

そのような視界の拡大とは逆で、人によっては見えにくい色や見分けにくい色が存在します。

その理由は、視細胞の遺伝的な差です。

3つの錐体がすべて正常に働いているのではなく、部分的に感度が弱かったり一部が欠損していると、色の見え方が変わります。

専門的には、3つの錐体がすべて正常にはたらいてる色覚者を「三色型色覚(さんしょくがたしきかく)」といいます。

この三色型に対し、ひとつの錐体の働きが弱い場合を「異常三色覚(色弱)」、一つの錐体が機能していない場合は「二色覚(色盲)」といいます。

・異常三色覚(錐体1つの働きが弱い)
・二色覚(錐体1つが機能していない)

異常三色覚も二色覚も、L錐体の感度が弱いタイプを1型、M錐体が弱いタイプを2型、S錐体が弱いタイプを3型といい、それぞれ特定の色の見分けがつきにくくなります。

さらに、一種類の錐体と杆体だけが働いている一色覚の方もいます。

色盲や色弱者の割合は、日本では男性の5%、女性の0.2%程度。

男性の方が多い理由は、色覚がX染色体に関係しているため。

男性はX染色体を1つしか持っておらず、女性は2つ保有しています。女性は、2つのうち片方に色盲や色弱の因子を持っていても、正常に色を知覚できます。

反対に、4番目の錐体を持っている「四色型色覚者(テトラクロマットといいます)」がいることも最近わかってきました。

割合的にかなり特殊なケース(男性よりも女性の方が多い)で、彼らは通常の三色型色覚者に比べて一部の色の感度が100倍高いのだとか。

世界がどう見えているか気になりますね。

色の見え方が違う理由② そのほかの要因

加齢による色の見え方の違いは?若者と老人の色の感じ方

たとえ一般的な三色型色覚でも、性別・年齢・人種・居住地域・言語・文化・個人的体験などが違えば色の感じ方が変わります。

男性と女性を比べると、一般的に女性の方が色への感度が高いといわれます。

色の感度は、加齢とともに低下します。目の水晶体が濁ることで、色から感じる彩度(あざやかさ)が落ちるためです。

また、北欧に住む人たちと赤道付近の国々の人は、日照量の違いから、色の知覚が異なるようです。

さらに言語・文化も色の認識に影響します。人類史の初期のころは「青」を指し示す言葉がなく、青が認識されていなかったのではないか?とも言われています。

これらの要素をすべて踏まえると、色の知覚は十人十色、いや70億人70億色。(この違いについては話題がたくさんあるため、別ページで掘り下げますね)

【本題】犬や猫や動物は色がわかるの?

動物の色の見え方は?

お待たせしました。いよいよ本ページの本題です。

犬や猫、そのほか動物の色覚について解説するにあたって、「ヒトの色覚」について触れないわけにはいきませんでした。

私たちはどう頑張っても犬にも猫にもなれませんから、彼らが何をどう見ているのか、彼らの目線にたって感じられません。

身体を借りて世界を観察できたら一番カンタンですね。しかし今のところできないため、ヒトとの共通点や相違点から「色をこう見ているだろう」という推測による研究が進められています。

つまり、犬や猫が「私たちと同ように色を見ているのか、それとも違うのか」は、視細胞の有無・種類・遺伝子・脳のはたらき、色をみせたときの反応などを手がかりとします。

人間と同じようにS、M、Lの錐体をもつ三色型色覚なのか。それとも二種類しか持っていないのか。あるいは四色型色覚以上で、もっとたくさん持っているのか?それぞれの視細胞はヒトと同じように働いているのか?

このような切り口です。

動物・鳥・虫のなかには、特定の状況下で色に反応をみせる種がいます。その色が、その生き物自身にどう見えているのかは推測・仮説の域を出ませんが、動物も色を感じていることは間違いないでしょう。

まだまだ研究が発展途上という前置きをしたところで、犬、猫、そのほかの哺乳類、鳥、魚、虫などの色覚についての現時点での見解をご覧ください。

人と犬や猫の感じる色は同じ?

結論から申し上げましょう。人間と犬や猫は、色を同じように感じていないようです。

それは、持っている錐体の種類が違うためです。

人間と同じ三色型色覚の動物は、チンパンジーを含むいくつかの猿人、そのほか数種の生き物にすぎません。

犬がわかる色

犬の色の見え方は?犬は人間と同じように色を見るのか?

犬は、錐体を2種類しか持っていない二色型色覚です。

犬の色の感じ方については、青と黄と茶は見分けがつくものの、赤と緑は区別できず灰色にみえているといわれています。

そのため、たとえば緑の芝生のうえで赤や緑のおもちゃを与えると、地面とおもちゃの違いを灰色の濃淡で把握している可能性があります。

もっとも感度が高いのはブルー系の色。

犬の俊敏性を競う「アジリティコンペ」というものをご存知でしょうか?世界各地で開催されるイベントで、Youtubeで探せば動画が出てきます。ご興味があればご覧ください。

犬がわかる色

こういった大会で、会場に設置されたポールやトンネルなどの障害物は、犬にとって視認性の高い「青」や「黄色」がよく使われています。

ワンちゃんは、青空のもとで黄色のボールをつかって遊ぶと、色のコントラストも味わえて一番嬉しい、かもしれません。(すでに赤や緑のお気に入りのおもちゃがあるなら、そのまま大切にしてくださいね)

猫がわかる色

猫は色がわかる?猫が見える色は何色?

では猫はどうでしょう?

猫も、犬と同じく2種類の錐体しか持たない二色型色覚です。視界は人間よりくすみ、紫、青、黄などを知覚し、赤や緑は灰色にみえていると言われています。(緑の領域までは感じている、という説もあります)

また、猫は近視であり、人間に比べて遠くのものが見えにくいようです。反対に、明暗をとらえる杆体は人間よりも多く、薄暗がりでも存在や動きを感知することができます。

周辺視野も人間より広いため、視界に生じた変化を敏感に察知できます。

馬や牛は色がわかるの?

馬は色が見える?馬や牛が感じる色は何色?

そのほかの哺乳類のうち、牛や馬やネズミやウサギも二色型色覚です。視細胞の関係から、赤はほぼ感じられませんが、青や黄やグレーは見分けられるようです。

そう、闘牛は、マタドールが持つヒラヒラ揺れる赤い布の鮮やかさを知りません。単に、興奮状態で動くもの目掛けて突進しているだけ。

あの赤は、牛のためではなく観客の目をひくための色彩です。

馬の色覚についての研究は、主に競馬のコース設計に応用が進められている段階です。特に障害競走において、木製や赤系色の障害物は、背景と溶け込んで視認できない恐れが指摘されています。

鳥が見える色は?

鳥が見える色は?

鳥の多くは4色型色覚で、なんと紫外線まで感知します。その理由は、食糧獲得や生存競争に役立つため。

実は、自然界の動植物のなかには紫外線領域の電磁波を反射しているものが数多く存在します。それらは、人間は色として感じることができませんが、紫外線が見える種族からすれば一目瞭然なのだとか。

たとえばベリー類の果実、一部の昆虫や花などは紫外線を反射し、鳥はそれを見ています。小動物の尿の痕跡も紫外線でわかるようです。

南国の鳥は人間にも美しい色彩をしていますが、鳥自身の目からは、別の色に見えているのかもしれません。

種によっては色の違いが、オスの優劣の決定、パートナー探しの目印になったりします。

たとえば、ガラパゴス諸島に住む「アオアシカツオドリ」という鳥は、その名前のとおり足が爽やかなブルーをしています。まるで足だけペンキで塗ったか、スリッパを履いているよう。

アオアシカツオドリの足はなぜ青い?

この鳥の足が青いのは、食べ物(青魚)の色素の影響です。生まれたての頃は色がついていません。徐々に青くなっていき、成熟した若い時期ほど鮮やかとなります。

そして、オスは、足が鮮やかなほどメスにモテます。元気で生殖に適しているという本能的な判断があるのでしょう。カップリングの際は、オスがかわいらしい求愛のダンスも踊リます。

カップリングが成立し、子を授かって年齢を重ねていくと、青い色がだんだんくすんでいきます。言わば、妻帯者かどうか色でわかるのですね。

この青が、私たちの目に映る色と同じなのかはわかりません。しかし、少なくとも色覚が生命の営みに関与していることは間違いなさそうです。

このほか、フクロウのような夜行性の鳥は杆体を多く持ち、色を知覚する能力よりも明暗を感じる能力に長けています。明暗を感じとる力は、人間の100倍とのこと。

鳥類ではありませんが、同じく夜行性のコウモリも色は感じず、黒・白・灰の世界で生きているようです。

虫が見ている色の世界は?

ハチは紫外線が見える?

昆虫のなかで、ハチや蝶も紫外線をとらえます。

人間の目には単なる黄色の花の中心が、これらの虫の目にははっきりとした別の色で映るそうです。色を感知する細胞の種類は人間よりも多い(たとえば、アゲハ蝶は視細胞を8種類持ち、そのうち4つを色の知覚に使う)のですが、脳の構造が異なるため同じように見えているとは言い難いかもしれません。

魚は色がみえる?わかるの?

魚は色がわかるのか?魚の色覚についての解説

まだごく一部の魚の行動パターンの検査をしたに過ぎませんが、どうやら魚も色覚を持っているようです。一部の魚は、鳥類や昆虫と同じく紫外線領域まで知覚できる錐体を持っています。

水中世界において、魚が色をどう見ていて、それを手がかりに行動しているかどうかはまさに研究途上です。ただ、魚の色使いがある種の目的やメッセージを持っていることは確かなようです。

たとえば、「タテジマキンチャクダイ」という魚は、幼魚と成魚では体の色や模様がまったく違います。生存にかかわる何らかの理由が諸説あります。

魚ではありませんが、タコやイカは錐体を持っていないため、色が分からない"色盲"だとされます。

ただし、彼らは皮膚に色を感じとるオプシンという感光性のタンパク質を持っています。これが周囲の景色を判断して擬態するのに使われているのだそうです。

もっとも色覚が優れている生物は?

シャコは色覚の王様!もっとも色を見分けられる生物は?

シャコは、人間以外の動物の色の見えかた、色覚の話題で必ず登場します。

彼らは16種類の視細胞を持ち、そのうち11~12種類が錐体細胞という、まさに色覚キングです。

水のなかで、サンゴ礁やほかの魚たちが、人間には想像できない姿に見えていることでしょう。

個人的には、「水深が深くなるほど光が届きにくくなるため、あまり見えないのでは?」と考えてしまいます。また、甲殻類は色として認識しているのか?それともただ単に周波数の違いとして捉えているのか、といった疑問も生じます。

ぜひ、シャコ本人からコメントを聞いてみたいものです。

【まとめ】みんな違う色彩世界で、一緒に生きている

ここまで長文をお読みいただきありがとうございました。人間と動物の色の見え方について、参考になりましたか?

私たち人間とほかの動物たちは、同じ太陽のもとに生きています。そのため、太陽から発せられる電磁波の成分は、どの種にとっても同じものです。

ところが、目のなかにある視細胞の種類や数が異なることから、目に見える範囲、可視領域はまるで違うようです。また、脳の仕組みも違っていますから、受け取った光をどのような色として知覚しているのかも千差万別。

同じ人間同士でも、遺伝的な色覚特性や環境の違いで色の感じ方が違います。種族が違えばその差は顕著。

十人十色、十種十色。

でも、一緒に地球で生きている仲間です。

「あなたには、世界がどう見えているの?」

と問いかけて多様性を認めることで、世界がもっと愛溢れる寛容なものになっていくかもしれませんね。

生き物の色覚については、今後の研究にまだまだ期待です。当ページの内容も、新しい話題があれば書き足します。

以上、「犬や猫は色がわかるのか?」のお話でした。

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